公認会計士試験受験において悩むことの1つは選択科目の選び方です。まだ何も勉強を始めていない予備校の申し込みをする時点で選択科目を決めますが、これは顔写真だけで結婚相手を選ぶ様なもので結構悩ましいです。 ただ、予備校に入った後でも選択科目はまだ変えられます。選択科目は短答式の出願願書に記載するため、12月短答の人は8月までに、5月短答の人は2月までに選択科目を決めればいいです。と言っても、論文式試験の大分前に戦いの条件を決めなければならない訳で、悩ましいのはやはり変わりませんね。そこで、今日は選択科目それぞれの特徴・選び方を考えてみたいと思います。
ちなみに私は最初は経営学選択のつもりでしたが、短答式の願書出願時に統計学選択に変更しました。結果的には統計学でいい成績を取ったので、良い選択だったと言えると思います。
ちなみに私は最初は経営学選択のつもりでしたが、短答式の願書出願時に統計学選択に変更しました。結果的には統計学でいい成績を取ったので、良い選択だったと言えると思います。
論文式試験の特徴
論文式試験の合否は素点ではなく偏差値で決まる
例えば、大学1年生が高校3年生に混じって九九の問題を解いて100点だった場合と、小学2年生に混じって微分・積分の問題を解いて、70点だった場合を考えましょう。九九の点数の方が素点は30点高いですが、偏差値は微分・積分の点数の方が高いです。なぜなら、九九の問題は周りも出来がいいのに対し、微分・積分の方は周りの出来が悪いためです。この様に偏差値は受験生全体と比較した相対的な出来を表します。そして公認会計士試験において合否は偏差値で決まります。噛み砕いて説明すると、同じ科目を受験して、同じ採点官に採点される人の中で相対的にいい出来であることが重要だということです。と言うことは、過去問をパラパラと眺めて簡単そうな方を選ぶというアプローチは適切ではないと言えます。なぜなら、簡単で解けそうな問題は他の受験生もいい点を取るので偏差値が伸びないからです。
出来不出来が分かれる科目で悪い点を取っても、出来不出来が分かれない科目でちょっと悪い点を取っても合格確率は同じ
民法、経済学は出来る人は出来て大きく差がつくから経営学選択にしなさい、という人は結構います。ですが、そういう人は、公認会計士試験のことを何も理解していません。公認会計士試験は、素点ではなく偏差値で決まります。そして出来不出来が分かれる科目で悪い点を取っても、出来不出来が分かれない科目でちょっと悪い点を取っても同じ偏差値になります。つまり、大きく差がつく科目で大きく差をつけられるても不利にはなりません。小さな差がつく科目で小さく差がつけられる場合と同じ点になるからです。科目免除について
- 商学の教授、准教授であるか博士号を持っている : 経営学免除
- 法学の教授、准教授であるか博士号を持っている : 民法免除
- 経済学の教授、准教授であるか博士号を持っている : 経済学免除
- 司法試験合格者 : 民法免除
- 不動産鑑定士試験合格者 : 民法または経済学免除
各科目の特徴とタイプ別おすすめの科目
色んなブログを見ると、皆さん取りあえず経営学をおすすめしているみたいです。民法、経済学は大変、統計学は数学の知識が必要・・・とか言って。ですが、統計学でいい成績を取った私が断言します。そんな適当な理由で経営学を選ぶのはもったいないです。統計学は本来数学が必要な学問なはずですが、公認会計士試験で統計学のいい成績を取るのに数学の知識は全く使いません。 ジャガイモの栽培法を知らなくてもカレーが作れる様に、数学の知識がなくても統計学の問題は解けます。
なので、選択科目は経営学と決めてかからないで下さい。決める前にせめてこの記事を読んで下さい。どの科目も問題自体の難易度は同じなので、この記事を読んだ後に好きな科目を選んで下さい。
では、各科目の特徴と向いている人を見てみましょう。
経営学
経営学とは?
経営学は企業や企業経営について、経営管理と財務管理の両面から取り上げる科目です。経営管理の分野では、経営戦略、経営計画、経営組織、動機づけ・リーダーシップ・キャリア、コーポレート・ガバナンスといったキーワードに関連する分野が出題範囲となります。財務管理の分野では、資本調達形態、投資決定、資本コスト、資本構成、ペイアウト政策、運転資本管理、企業評価と財務分析、資産選択と資本市場、デリバティブとリスク管理といったキーワードに関連する分野が出題範囲となります。時事的な問題が取り上げられることも多く、企業の最新動向にも注意する必要があります。
必要勉強時間
一般的に言われる必要勉強時間の目安 | 200~250時間 |
---|---|
私が推定する必要勉強時間の目安 | 学生 150時間 社会人 100時間 |
経営学の特徴
数学が不要である
経営学は計算量も少なく数学が不要な科目と言えるでしょう。暗記量が多い
経営学は暗記科目です。すると、論文式試験直前の暗記科目追い込みの時期に選択科目にも時間を割かなければならず、他の科目の成績に多少の影響が出るでしょう。学問というより社会常識が問われる
経営学というか社会常識みたいな問題が結構あります。解けないのは社会人としてまずい様な問題が多い、と言えるでしょう。その意味で、学生の方は勉強する価値がありますし、社会人の方は勉強時間が節約できるでしょう。試験範囲がよく分からない
社会常識が問われるということは試験範囲が膨大である(=よく分からない)と言うことです。従って勉強範囲が絞りにくくどんなに勉強しても全ての論点を網羅することが出来ません。満点を取ることは難しいでしょう。予備校で勉強したことが試験に出るかは運
経営学の出題範囲は試験委員の先生の主観の影響を受けます。「ここを勉強するべき」と判断した部分を予備校がテキストにしてくれますが、そのテキストにする範囲は予備校によって違い、従ってアタリハズレで他の予備校の生徒と差がついてしまいます。そういうリスクのある科目です。予備校で勉強しすぎると過剰適合が起きてしまう
予備校がテキストにした範囲は、試験範囲ではありません。予備校が試験範囲だと思い込んでいる部分がテキストになっているだけです。なので、予備校のテキストで勉強しすぎると過剰適合が起きてしまいます。試験範囲がファジーな経営学ではこのリスクは大きいでしょう。多くの受験生が選択する
多くの受験生がなんとなく経営学を選択します。と言うことは、学習のペースが掴み易い(気がする)という利点があります。「気がする」と書いたのは、試験範囲がよく分からない以上、例え周りと同じペースで勉強していても、学習のペースが本当に正しいのかはよく分からないからです。でも、気がするのは精神衛生上いいことです。勉強友達・勉強彼女が作れる・・・かも
多くの受験生が選択すると言うことは、友達と勉強の進捗について楽しいお話が出来るということです。その友達が異性なら、運命の出会いになるかも知れません。運命の出会いは冗談にしても、他の科目を選択した人は、周りに同じ科目を選択した人がおらず孤独な勉強が必要になることは確かです。なので、周りに流され易い人、根拠なくなんとなく安心したい人は経営学を選ぶべきです。向いている人
数学が苦手な人
数学的要素を余り含まない科目なので、数学な苦手な人でも大丈夫です。社会常識がある人
社会常識的な要素を多分に含む科目なので、社会常識がある人に向いている科目です。周りに流され易い人
根拠なくなんとなく安心したい人
朝の情報番組の占いを信じる人
周りの受験生もこの科目を選択するので、なんとなく安心な気がします。その安心感は、例えるなら朝の情報番組で自分の星座が1位だからいいことが起きると考えるのと同じ位根拠がない安心感ですが、占いを信じている人ならその安心感でも精神安定に役立つかもしれません。合格より運命の出会いを探している人
受験生が多いので、教室で出会いのチャンスはあるでしょう。民法
民法とは?
民法は財産法の分野と家族法の分野に分けることが出来ますが、財産法の分野が出題されます。具体的には、物を所有するということや売買契約、損害賠償に関連した問題が出ます。家族法の側は余り出ません。ちなみに私の年は民法大改正がある影響で選択者が少なかったです。
必要勉強時間
一般的に言われる必要勉強時間の目安 | 450時間 |
---|---|
私が推定する必要勉強時間の目安 | 350時間 |
民法の特徴
数学不要
法律科目なのでもちろん数学不要ですね。暗記量が非常に多い
暗記量が多いです。すると、論文式試験直前の暗記科目追い込みの時期に選択科目にも時間を割かなければならず、他の科目の成績に影響が出るでしょう。試験範囲が膨大である
いくら財産法関係の典型論点しか出ないとは言っても、何せあの民法をやる訳ですから、企業法を勉強したのと同じ位の労力は必要になると考えるべきでしょう。予備校の授業が早期から始まる
試験範囲が膨大であるため、論文式試験の1年以上前、周りのみんなが短答式を視野に各科目の基礎固めをしている頃から授業がみっちりあります。これは結構精神的に負担になると思います。社会を生き抜く基礎知識が身に付く
友達に貸したお金が返してもらえない時、あなたならどうしますか?民法を勉強しておけば、そういう時何をしなければならないかがなんとなく分かるでしょう。そういう意味で勉強するべき科目です。受験生が少ない
経済学・統計学と同様、民法選択者は少ないです。なので、友達と勉強の進捗について楽しいお喋りは出来ないです。模試や答練を受けても寂しいと思います。一方で、選択者が少ないため、全国1位が取り易いです。科目1位だと祝賀金を予備校からもらえるので、ちょっぴりお得な科目です。
他の受験生は大穴狙いか法律科目に余程の自信がある人である
経営学に比べて勉強時間が多く先輩情報の少ない民法を選択したいと思うのはどんな人でしょうか?それは法律科目に自信があるか、申し込んだ時はやる気があったか、大穴狙いの人です。そうすると、他の受験生がそこそこ出来ると考えられるため、そこそこ勉強する必要がありそうです。科目で大きな差が付かない
受験生が極端に少ないため、あなたの得点で母集団が歪みます。なので、科目で大きな差が付かず、出来が悪くても他の科目で挽回できるチャンスがあります。・・・と言われてもピンと来ませんよね。
具体的に考えてみましょう。あなた以外の受験生の得点の分布が下表の通りであったとしましょう。あなたが60点を取ってしまってもあなた以外の受験生が30人の場合偏差値は40.2点で足切りになりませんが、受験生が90人の場合偏差値は39.8点で足切りに遭います。受験生が少ない科目であなたが悪い点を取ってしまうと平均点が押し下げられるので、偏差値がそこまで落ちないのです。
点数 | 得点者の割合 | |
---|---|---|
50点 | 6.7% | |
60点 | 20.0% | |
70点 | 46.6% | |
80点 | 20.0% | |
90点 | 6.7% | |
あなた以外の受験者数 | 30人の場合 | 90人の場合 |
あなたの偏差値 | 40.2点 | 39.8点 |
向いている人
数学が苦手な人
法律科目なので数学はいりませんね。暗記が得意な人
暗記量が多いので、暗記を苦にしない人でないとつらいです。法律科目に馴染みがある人
法律科目に馴染みがある人だと、暗記量が少しは減るかもしれません。モチベーションがある人
周りと違う選択をする精神的な強さがある人
論文式試験より相当前、周りが財務会計論計算編の基礎固めをしている頃から勉強を始める必要がある科目なので、色んなことを思いながらでも勉強できる強さが必要です。私生活でトラブルを抱えており、法律上の知識が必要な人
民法の知識は公認会計士試験自体に関係なく役立つ知識なので、実生活で必要ある人は選択してもいいと思います。お友達とお喋りしないでも勉強できる人
何せ受験生が少ないので、友達とガヤガヤ話しながらじゃないと勉強できない人には向かないです。科目全国1位になって気持ち良くなりたい人
科目全国1位になって予備校から祝賀金をもらいたい人
受験者数が少なく1位を取り易いので狙い目です。経済学
経済学とは?
多くの大学の経済学部で必修科目となっているミクロ経済学とマクロ経済学が出題範囲となっているのが経済学という科目です。ミクロ経済学は企業や個人の経済活動にフォーカスするのに対し、マクロ経済学は国や世界規模の経済変動にフォーカスします。必要勉強時間
一般的に言われる必要勉強時間の目安 | 500時間 |
---|---|
私が推定する必要勉強時間の目安 | 300時間 |
経済学の特徴
数学の知識が必要
経済学は計算問題が多いです。微分程度の数学の知識が必要です。暗記量がやや多い
経済学は数学的な問題も多いですが、知識を問われる問題も出ます。なので暗記するべきことがそれなりにあります。すると、論文式試験直前の暗記科目追い込みの時期に選択科目にも時間を割かなければならず、他の科目の成績に影響が出るでしょう。試験範囲が膨大である
多くの大学で必修となっているミクロ経済学とマクロ経済学が範囲な訳ですから、試験範囲はそれなりに広いです。それなりの勉強時間が必要です。予備校の授業が早期から始まる
試験範囲が膨大であるため、論文式試験の1年以上前、周りのみんなが短答式を視野に各科目の基礎固めをしている頃から授業がみっちりあります。これは結構精神的に負担になると思います。私の同窓生にも経済学を選択したモチベーションの高い人がいましたが、彼は一回目の短答に落ちています。効率良く勉強する自信が無いなら、経済学は選択しない方が無難です。選択科目の中で唯一実社会で役に立たない
名前だけで判断すれば、経済学を勉強したら経済のことが分かり社会で役に立ちそうですが、そんなことはありません。経済学の教授で自己破産した人もいますし、テレビに出る経済学教授の景気動向予測や株価予測はいい加減ですね。え?経済学はそんなことを目的にしていない?そんな目的でない経済学に実用性があると言えますか?大学の必修科目の勉強には役立つ
実社会では役立ちませんが、経済学は実用性を放棄した代わりに学問自体が体系だっているので、勉強していて楽しいと思います。また、多くの大学で必修科目になっているはずであり、大学の勉強にも役立つはずです。受験生が少ない
民法・統計学と同様、経済学選択者は少ないです。なので、友達と勉強の進捗について楽しいお喋りは出来ないです。 模試や答練を受けても寂しいと思います。一方で、選択者が少ないため、全国1位が取り易いです。科目1位だと祝賀金を予備校からもらえるので、ちょっぴりお得な科目です。
向いている人
数学が得意な人
4つの選択科目の中で一番数学を使います。高校文系レベルですが、苦手な人は回避した方がいいでしょう。モチベーションがある人
周りと違う選択をする精神的な強さがある人
民法と同じですね。論文式試験より相当前、周りが財務会計論計算編の基礎固めをしている頃から勉強を始める必要がある科目なので、色んなことを思いながらでも勉強できる強さが必要です。実用性を重視しない人
大学の勉強に活かしたい人
経済学は社会で役立たない代わりに大学の単位取得には役立ちます。大学の勉強とのシナジーが見込める点はいい点でしょう。お友達とお喋りしないでも勉強できる人
何せ受験生が少ないので、友達とガヤガヤ話しながらじゃないと勉強できない人には向かないです。科目全国1位になって気持ち良くなりたい人
科目全国1位になって予備校から祝賀金をもらいたい人
受験者数が少なく1位を取り易いので狙い目です。統計学
統計学とは?
データ解析やファイナンス理論によく用いる記述統計と確率、推測統計、相関・回帰分析の基礎等が出題範囲となります。数学に関連ある気がしますが、そんなことはありません。必要勉強時間
一般的に言われる必要勉強時間の目安 | 200時間 |
---|---|
私が推定する必要勉強時間の目安 | 60時間 |
統計学の特徴
実は数学の知識が必要ない
テキストには積分記号が載っていたりして、文系の方はそれだけで敬遠すると思います。ですが、 ジャガイモの栽培法を知らなくてもカレーが作れる様に、積分記号の意味を知らなくても統計学の問題は解けます。統計学を極めるのではなく、試験でいい成績を取るだけなら数学の知識は全く要りません。中学受験レベル(=小学生6年生レベル)の算数はある程度必要
頭の柔軟さが必要
数学の知識は全く要りませんが、算数の力、つまり頭の柔軟さはある程度必要です。中学受験経験者で、「算数」が苦手だった人は統計学を避けた方が無難でしょう。試験範囲が極めて狭い
確率と検定が分かれば統計学は何とかなります。試験範囲はとても狭いです。覚えることが少ない
4つの選択科目の中で一番覚えることが少なく勉強が楽だと思います。なので、その分他の科目に勉強時間を割り振り、統計学自体の出来がどうであれ、他の科目で差を付けることが可能です。論文式試験の合格率が一番高い
選択科目別合格率(独自集計)で詳細記していますが、4つの選択科目の中で一番合格率が高いのが統計学です。12月短答式合格者でかつ統計学選択だと、実に7割の人が論文式に一発合格します。統計学が勉強負担の少ない科目である点も影響していると思われます。統計的思考力が身に付く
あなたは宝くじや馬券を買いますか?株式投資をする時、ポートフォリオはどう組みますか?統計学を勉強すれば、統計的思考力が身に付くのでこういう判断をする時ちょっとだけ役に立ちます。受験生が少ない
民法・経済学と同様、統計学選択者は少ないです。なので、友達と勉強の進捗について楽しいお喋りは出来ないです。 模試や答練を受けても寂しいと思います。一方で、選択者が少ないため、全国1位が取り易いです。科目1位だと祝賀金を予備校からもらえるので、ちょっぴりお得な科目です。
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