2016年12月4日日曜日

現役合格したければ、勉強し過ぎるな! サーカスの犬の罠

明日定期試験を受けるから、学校にもらった問題集の答え暗記しよう。
今度模試を受けるけれども、予備校の先生が先週妙にここ強調してたし暗記しておこう。
今度答練を受けるけれども、いい点を取るために事前に出題範囲を暗記しておこう。

ちょっと待って!!
その勉強、無駄です。というか、有害です。やらない方がマシです。

サーカスの犬

犬が足し算の問題を出されて正解の札を取ってくるサーカスを皆さんは見たことがありますか?
犬って賢いですね。足し算が出来るんですね!・・・な訳ありませんね。犬には足し算は出来ません。
では、なぜ犬は正解の札を取ってくることが出来るのでしょうか?それは、飼い主が合図を出しているからです。合図を見て正解の札を取ってくると誉められると言うことを繰り返す内に、パブロフの条件反射により正解の札を取ってくることが出来る様になるのです。

最近流行りのDeep LearningとOverfitting

今年、Alphabet社 (Google)の子会社がアルファ碁というソフトを開発してプロ棋士をコテンパンにやっつけましたね。このアルファ碁というソフトは、Deep Learning(機械学習)という機能を備えており、過去の数万に及ぶ棋譜を自動で解析して局面を評価する評価関数を自動生成し、いい手と悪い手を自分で勉強していくのだそうです。
さて、ここでアルファ碁に勉強させる過去の棋譜が全部幼稚園児の打った棋譜だったら、何が起きるでしょうか?優れた評価関数が出来るでしょうか?
機械は、与えられたインプットデータに共通する条件をじぶんで見つけ出し学習しますが、機械が正しく学習するためには、勉強するデータが普遍的なものである必要があります。そうでない場合、与えられたインプットデータにはキレイに一致しますが、新しい事象に対応出来ない学習となってしまうでしょう。
グラフ1を見て下さい。このグラフには5つの点がプロットされていますが、これを見てxとyにどういう相関があると皆さんは思いますか?多くの皆さんは、グラフ2の様な線をイメージするはずです。しかし、グラフ3の様な線を描くことも出来ます。グラフ2の線は微妙に5つのプロットからズレているのに対して、グラフ3の線は完全に5つのプロットを通っています。与えられた5つのインプットデータへの一致率はグラフ2よりグラフ3の方が高いですが、グラフ3の線はグラフ2の線と違って将来の6つめのデータを恐らく説明出来ないでしょう。
この様に、全ての事象に存在する訳ではなく、たまたま学習した範囲に存在していた共通点を、普遍的なものであると勘違いして学習してしまうことを、Overfitting (オーバーフィッティング、過剰適合、過学習)と言います。

人間のズル  意識してやる過剰適合

サーカスの犬も本来計算結果とは何の関連性もない飼い主の仕草を見て答えが分かる様になっている訳で、Overfitting (過剰適合)が起きていると言えます。
人間の場合どうでしょうか?人間は優秀だから犬とも機械とも違って、勉強した範囲にしか適用できない覚え方 (グラフ3の様な覚え方)をすることはありえないのでしょうか?
高校時代を思い出してみて下さい。期末試験の前日、学校でもらった問題集の答えを丸暗記したことはありませんか?先輩から過去問をもらって解いたことはありませんか?高校の期末試験でいい点を取ることが勉強の目的であれば、効率のいい勉強法かも知れませんが、学力をつけるためと考えるなら、この勉強法はサーカスの犬と同じ、グラフ3の勉強法になっていると言えるでしょう。
人間も過剰適合しているのです。

あなたも過剰適合している   無意識の過剰適合

「高校の期末試験対策は赤点回避のためにやむを得ずにやっただけで、公認会計士試験の勉強でそんなことするはずない。」
そう仰る人もいるでしょう。確かに公認会計士試験の勉強で意識してやる人は余りいないでしょう。
ですが、本当にあなたは過剰適合していないでしょうか?

あなたは予備校のテキストで勉強していますか?
読んでいるテキストに書いてあること、それは普遍的な真理ではなく普遍的な真理をテキストの作成者が切り取ったものです。予備校の先生が強調していた所は、本試験で重要度が高い所ではなく予備校の先生が本試験での重要度が高いと思っている所です。
答練で出てくる問題は、出題範囲の中の一部を、ある切り取り方で出題したものです。本番で同じ部分が出るとも、同じ切り取り方をされるとも限らないのに、何度も答練を繰り返し解いていませんか?
明日、模試だからって、先週先生が授業中に繰り返していた部分を勉強していませんか?そうすると模試の結果は良くなるでしょうが、その勉強の効果は本試験までもちますか?
つまり、私達の勉強の対象は常に偏っており、そのことを意識しないで勉強することには問題があるのです。

過剰適合の問題点

「過剰適合かもしれないけれども、勉強しないよりはマシなんじゃないの?」
そう思う人もいるでしょう。その考え方が間違っているとは言いません。ですが、合っているとは言えません。
なぜなら、勉強して過剰適合が起きてしまうと大きな問題が生じるからです。

模試でいい成績を取ってしまう。

自分の課題に気付けない。

試験や模試で点が悪いと焦ります。問題を間違えることで、自分の理解が不十分な点をしっかり把握できます。しかし、いい点を取ってしまうと、こういう効果が見込めないのです。実力でいい点を取ったならそれでも構いませんが、ドーピングしていい成績を取ってしまうことには弊害があると言えるでしょう。

勉強が足りている気になる。

いい点を取ってしまうと実力がついていないのに勉強が足りている気になってしまいます。長時間勉強机に向かっており御本人が勉強したつもりになっているだけに、これはタチが悪いです。

頑張りがきかなくなる

勉強はつらいものです。そのつらい勉強時間はなるべく最短にしたい、と誰もが思います。無駄で効率の悪い勉強に時間を割いてしまうと、後で効率のいい勉強をする忍耐力が残らない可能性があります。それなら、その時間遊んでリフレッシュしておいて、後で集中して勉強した方がいいです。

知らない問題に対処出来なくなる

あらかじめ勉強してある問題を解くことを繰り返していると、普段と違う出題の仕方をされた時、あるいは知らないことが聞かれた時、焦ってしまいます。また、こういう知らない問題に対処する訓練を積んでいないため、知っていることを駆使して知らない問題に答えると言うことが出来なくなるのです。例えば、2016年論文式試験の管理会計論第2問の第1問で実は簡単だけど予備校では見たことがない問題が出題されました。過剰適合の弊害でこれが答えられなかった受験生は多かったでしょう。ですが、私は過剰適合していないのでこの問題を容易く正解し、管理会計論で偏差値90点を確保することに成功したのです。

アクセスや答練の点が悪くても、模試や本番でいい点を取れる人になるには?

人間の学習対象が偏っている以上、人間は無意識の内に過剰適合してしまいます。
この対策として以下の様な方法をお勧めします。

目的意識を持って勉強する

2日後の試験でいい点を取ることは勉強の目的ではないと理解しているから、2日後の試験のためだけの勉強はやらないのです。自分の目的を達成するためだけの勉強をするから、総勉強時間が極端に短くても上位合格出来るのです。

考えながら勉強する (一般化して理解する)

自分が勉強していることをなるべく一般化させて理解する様にして下さい。
勉強対象が偏っていても、一般化させようと思いながら勉強していれば、その偏りを補うことが出来ます。

色んな勉強をする

勉強の情報源を多様化して下さい。普段と違う先生に質問してみて下さい。他の予備校のテキストを読んでみて下さい。新聞を読んでみて下さい。勉強机に向かうだけが勉強ではありません。色んな勉強をして下さい。そうすることで、それぞれの経験同士が補い合い、深みのある勉強をすることが出来ます。

他の予備校の模試を受ける

他の予備校の模試は普段教わっていない先生が作っているので、自分の実力を客観的に評価する役に立ちます。刺激になります。
まあ、私は受けませんでしたが・・・

私の様に、アクセスや答練は低空飛行だけど、模試や本番ではいい点が取れる人は、ここに書いた様なことを意識して勉強しています。

長時間勉強机に座ることには何の価値もない

皆さんの目的は何でしょうか?定期試験でいい成績を取ることですか?模試でいい成績を取ることですか?本当の目的は何でしょうか?それを常に意識して勉強に励んで下さい。そうすれば、勉強机に長時間座ることには何の価値もないと分かるでしょう。
現役合格したいなら、そんな勉強しないで下さい。

まとめ

目的意識を持って、考えながら勉強して下さい。色んな情報源から情報を取り入れて下さい。そうすれば、勉強時間を劇的に減らすことが出来るはずです。

0 件のコメント:

コメントを投稿